成年後見開始“前”の契約は取り消せる?──認知症と消費者被害への正しい対処法
「成年後見制度を使えば、認知症の家族が結んだ契約は全部取り消せるのでは?」──実務では、このご相談を大変多くいただきます。
しかし、成年後見制度の利用開始“前”に結んだ契約は、「制限行為能力(成年被後見人)」を理由に取り消すことはできません。(民法9条の取消権は、後見開始の審判後に限って機能します)。
後見開始前に結んだ契約 → 「成年被後見人であること」を理由に取消は不可。
ただし、別ルートの救済があり得ます:
意思能力を欠いていた → 難しい。
不実の告知・威迫・困惑等 → 消費者契約法の取消・解除。
訪問販売・電話勧誘等 → 特定商取引法のクーリング・オフ(原則8日)
錯誤(民法95)・詐欺・脅迫(民法96) → 一般民法による取消・無効の主張。
Q. 成年後見制度利用前の契約(高額布団・健康食品・リフォーム等)は取り消せますか?
A. 「後見の取消権」(民法9条)は後見開始の審判確定後の行為に限られます。したがって開始前契約の取消は不可。
ただし、意思能力の欠如(判断能力が著しく欠けていた)や、不実の告知・威迫などが立証できれば、無効や解除・取消の余地があります。
成年被後見人Aさんが、悪質なリフォーム会社と不適切な契約(以下「本件契約」)を締結。のちに親族が申立てを行い、家庭裁判所の審判が確定して成年後見制度が開始。
この場合、契約時点では後見開始前なので、民法9条の取消は使えません。他方で以下の手当てを検討します。
無効主張:契約当時、Aさんが意思能力を欠いていたことを医学的資料・周辺証拠で立証。
消費者契約法:効果・性能の不実告知、強引な勧誘による困惑などがあれば取消・解除。
特商法のクーリング・オフ:訪問販売や電話勧誘等で書面受領から8日以内(類型により20日)なら無条件解除。事業者の不実告知や威迫があれば期間経過後でも主張可能。
錯誤・詐欺・脅迫(民法95・96)に基づく取消等。
民法9条:成年被後見人の法律行為は取り消すことができる(ただし日用品等は不可)。→ これは後見開始後の行為に作用。
後見開始の審判:要件や効果(成年後見人の選任等)は民法7条ほか。
意思能力欠缺:意思能力を欠く者の行為は無効(判例・通説)。
消費者契約法:不実告知・困惑等で取消しが可能。
特定商取引法:訪問販売等はクーリング・オフ(原則8日/類型により20日)。
追加支払・工事の着工を止める(書面で通知)。
証拠を確保(契約書・見積書・パンフ・領収書、通話録音、訪問日時のメモ、家族の同席記録など)。
経緯を整理(勧誘の場所・時間、発言内容、体調・認知機能の状況)。
クーリング・オフ期間の有無を即確認。
専門家・消費生活センターに相談し、無効・取消・解除のどれで攻めるかを検討。
将来に向けて判断力の低下が見られる場合は、成年後見等の申立てを早めに。
後見開始前の契約は、原則として**「後見」を理由に取消不可**。
ただし、意思能力の欠如や消費者契約法・特商法・一般民法の規定により、無効・取消・解除の可能性があります。
迷ったら証拠を確保し、早めに専門家へご相談ください。
相続・後見・消費者被害に関するご相談は、愛知県大府市の柴田加藤事務所の司法書士・行政書士 加藤芳洋までお気軽にどうぞ。