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ブログ 2025年09月25日

遺産分割前でも預貯金を引き出せる?預貯金の仮払い制度で葬儀費用を確保

はじめに:相続直後の預金が引き出せない!?

身内が亡くなった直後、葬儀費用当面の生活資金が必要なのに、故人名義の預貯金口座が凍結されてお金を引き出せない…。こうした状況に直面し、お困りの方は少なくありません。相続開始と同時に故人の銀行口座は凍結され、遺産分割が終了するまでは勝手に引き出すことができなくなるためです。以前は被相続人の預金を下ろすには相続人全員の同意が必要とされ、そのため故人と同居していた配偶者や子どもが日常生活費にも困ってしまうケースもありました。

しかし2019年の民法改正によって、新たに「預貯金の仮払い制度」が創設されました。これは、遺産分割前でも各相続人が一定額の預貯金を単独で払い戻せる制度です。葬儀代や当座の生活費に充てるための資金を早期に確保できる相続人救済措置と言えます。本記事では、大府市やその周辺で相続手続きをサポートする司法書士が、この預貯金仮払い制度の内容と活用方法について、法律の条文を引用しながら専門的視点でわかりやすく解説します。

預貯金の仮払い制度とは?法律上の根拠と概要

預貯金の仮払い制度とは、故人の預貯金について、遺産分割が終わる前でも各相続人が一定額を払い戻せるようにした制度です。平成28年の最高裁判決で「預貯金債権は遺産分割の対象となる」との統一見解が示されて以来、遺産分割前に勝手に預金を使えなくなったため生じた不便を解消する目的で、平成30年民法改正により導入されました。

簡単に言えば、「各相続人は、被相続人の預貯金残高の3分の1に、自身の法定相続分を掛けた金額」を上限として、遺産分割前でも単独で預貯金を引き出せるということです。例えば法定相続分が1/2の相続人であれば、各預金口座の残高の3分の1×1/2=残高の6分の1が引き出せる計算になります。さらに、この制度には上限額が定められており、一つの金融機関につき最大150万円までしか払い戻しを受けることができません。150万円という金額は法務省令(平成30年法務省令第29号)で定められたもので、「標準的な当面の生活費や平均的な葬式費用の額」を踏まえて設定されています。実際、総務省の統計によれば一人あたり月間生活費の平均は約12万円弱であり、また葬儀費用の全国平均はおおむね150万円前後と言われます。150万円という上限額には、約1年分の生活費平均的な葬儀費用を賄えるようにとの趣旨があるわけです。

なお、この「3分の1×法定相続分(上限150万円)」という金額計算は金融機関ごと・口座ごとに行います。たとえば被相続人がA銀行に複数の口座(普通預金や定期預金など)を持っていた場合、それぞれの口座について相続開始時残高の3分の1×相続分を計算し、それがその口座から引き出せる上限額となります。そして一つの銀行から引き出せる合計額は150万円が上限です。仮に計算上の口座合計額が150万円を超える場合は、引き出す相続人自身が口座ごとの引出額を調整し、総額が150万円以内に収まるようにしなければなりません。逆に言えば、故人の預金が複数の銀行に分散されている場合は、銀行ごとに最大150万円まで(または計算式で求めた額まで)引き出せる可能性があります。また、この150万円は相続人一人あたりの上限でもあります。共同相続人が複数いる場合、それぞれの相続人が自分の法定相続分に応じて本制度を利用できるため、一つの家庭で引き出せる総額は相続人の人数に応じて高くなります(※預金名義人ごとに計算式が適用される点に注意)。

✍ポイント:以上のように、預貯金の仮払い制度を使うことで、預金口座が凍結されていても当座必要な資金を一定額まで引き出すことが可能です。たとえば葬儀費用の支払いについては、多くの場合150万円以内で収まるため、本制度で十分対応できるケースが多いとされています。また、被相続人が生前一家の生活費を支えていた場合でも、この制度を活用して遺族の生活費を早期に確保することができます。

仮払いした金額の扱い(相続分の前渡し)

預貯金の仮払い制度によって引き出した金額は、最終的な遺産分割においてその相続人が既に取得したものとみなされる点に注意が必要です。民法909条の2後段でも「当該権利の行使をした預貯金債権は、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす」と明記されています。つまり、仮払いで先に受け取った分はその相続人の相続財産の一部前払いとみなされ、後日の分配で不公平にならないよう精算される仕組みです。もし仮払いで受け取った額が最終的な相続分を超えてしまった場合には、その超過分を他の相続人に清算(支払い戻し)する義務も生じます。このため、誰がいくら引き出したかはきちんと記録しておき、葬儀費用を誰が負担するのかといった点も含めて、後日の話し合いで揉めないよう家族間で共通認識を持っておくことが大切です。

150万円以上を引き出したい場合は?(家庭裁判所での仮分割の仮処分)

預貯金の仮払い制度では、各相続人につき一金融機関あたり150万円が上限となります。ではそれ以上の額がどうしても必要な場合は、諦めるしかないのでしょうか? 実は、家庭裁判所に申し立てることで150万円を超える払戻しを受ける方法も用意されています。民法の仮払い制度とは別の手続きになりますが、家事事件手続法第200条第3項が定める**「預貯金債権の仮分割の仮処分」**です。

家事事件手続法200条3項(2019年施行)では、「遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合」に、「相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要がある」と家庭裁判所が認めるときは、その申立てにより遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を当該相続人に仮に取得させることができる(=その相続人だけ先行して払い戻しを受けられる)と規定されています。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは認められません

要件を整理すると、(1)遺産分割の調停または審判を家庭裁判所に申し立てていること、(2)相続財産の債務の支払い・相続人の生活費支弁など緊急に預貯金を使う必要があること、(3)他の相続人の利益を不当に害しない範囲であること──この三点を満たせば、家庭裁判所が個別の預貯金について仮に引き出しを認める審判(仮処分)を下してくれる仕組みです。裁判所を通す分だけ手間と時間はかかりますが、その分引き出し可能額の上限は法律上定められておらず、必要性と相当性について裁判官がケースごとに判断することになります。民法909条の2のような画一的な金額制限がないため、状況次第では法定相続分を超える額の払戻しが認められる可能性もあります(※実務上は原則として法定相続分相当額が上限とされています。どうしても150万円では足りない特別な事情がある場合には、家庭裁判所での仮処分も視野に入れるとよいでしょう。

預貯金仮払い制度の手続きと必要書類

預貯金の仮払い制度を利用するには、金融機関の窓口で所定の手続きを行う必要があります。通常の預金引き出しとは異なりATMで自由に引き出すことはできません。銀行窓口に出向き、必要書類をすべて提出して銀行側の審査・確認を受ける流れになります。具体的に金融機関から求められる主な書類は次のとおりです。

  • 被相続人の戸籍謄本(または戸籍全部事項証明書)
    被相続人が出生してから死亡するまでの連続した戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍を含む)を用意します。発行日から1年以内の原本が必要です。

  • 相続人全員の戸籍謄本(または抄本)
    相続人全員について、被相続人との身分関係がわかる戸籍謄本または抄本(原本)を用意します。こちらも発行日から1年以内のものが必要です。相続人が配偶者や子どもの場合、その続柄は被相続人の戸籍謄本に記載されているため個別の戸籍を省略できるケースもありますが、相続人が兄弟姉妹の場合は自分が兄弟であることを証明する必要があるため、被相続人の戸籍だけでなく被相続人の両親の出生から死亡までの戸籍も取得する必要があります。必要書類の範囲は相続関係によって変わりますので注意してください。

  • (上記戸籍の代替)法定相続情報一覧図の写し
    上記の戸籍関係書類の代わりに、法務局で発行できる**「法定相続情報一覧図の写し」**(原本)を提出することもできます。これは被相続人と全相続人の続柄を一覧化した公的書面で、有効期限は発行日から概ね1年間です。一覧図があれば各種戸籍を何通も集める手間を省けるため、積極的に活用すると良いでしょう。

  • 払戻しを求める相続人本人の印鑑登録証明書
    窓口で払戻し手続きを行う相続人(請求者)の印鑑証明書(原本)も提出します。発行後6か月以内のものが有効です。あわせて、銀行届出印(実印)や本人確認書類(運転免許証など)も持参しましょう。

  • 金融機関所定の払戻請求書等
    各金融機関が用意する相続預金払戻請求書や委任状などの用紙に必要事項を記入します。用紙は窓口で入手できるほか、銀行によっては公式サイトからダウンロード可能です。司法書士等に依頼している場合は、事前に書類一式を準備してもらえることもあります。

以上の書類を提出すると、銀行側で相続人であることや引き出し可能額の算定根拠(法定相続分に基づく金額かどうか)の確認が行われます。提出書類に不備や不足がなければ、所定の払戻し手続きが進みます。ただし、その場で即現金が受け取れるわけではない点に注意が必要です。銀行は万一のミスがないよう慎重に書類を審査するため、払戻しが実行されるまで一定の時間を要します。具体的な所要日数は金融機関や相続関係の複雑さによってケースバイケースですが、即日中に必要資金を引き出せない可能性もあります。提出した書類だけでは被相続人との関係が明確でないと判断された場合、追加書類の提出を求められたり、最悪の場合は払戻しが断られるケースもありえます。そのため、「いつまでにいくら下ろしたい」という予定がある場合は、早めに手続きを開始することをおすすめします。

葬儀費用や当座の生活資金に活用されるケース

預貯金の仮払い制度によって引き出したお金は、主に葬儀関連費用遺族の生活費といった緊急性の高い支出に充てられています。たとえば、葬儀社への支払い(葬儀一式の費用や火葬料など)は故人の預金から賄われるケースが多いですが、口座が凍結されていると支払いに支障を来す恐れがあります。本制度を利用すれば、死亡直後でも一定額の預金を引き出して速やかに葬儀代金を用立てることが可能です。また、被相続人が生前一家の収入の大部分を担っていたような場合には、残された配偶者やお子様の当面の生活費を確保する目的でも活用されています。平均的な葬儀費用は約150万円と言われるため、本制度の上限額150万円は葬儀代をまかなうことを想定して定められたとも言えます。実際、仮払い制度が創設されたことで、葬儀費用については多くのケースで家庭裁判所に頼らずとも迅速に対応できるようになったと評価されています。

一方で、仮払いできる額には限度があるため、相続人間で公平を期した活用が大切です。誰がどの費用のためにいくら引き出すのか、事前によく話し合っておきましょう。葬儀費用をはじめ、相続人のうち特定の人が立替払いした費用は、最終的な遺産分割で清算対象となります。そのため、複数の相続人が各自で仮払い制度を利用する際は、お互いに情報共有し、後日の精算トラブルを防ぐことが重要です。

司法書士がサポートできること(初回相談無料)

「預貯金の仮払い制度を使えばお金を下ろせるのは分かったけれど、戸籍集めや書類手続きが大変そう…」と感じている方もいるかもしれません。そうした場合は、ぜひ司法書士への相談をご検討ください。司法書士は相続手続きの専門家として、本制度の利用に関する実務的なサポートを提供できます。

具体的には、司法書士は法定相続情報一覧図の取得代行戸籍謄本の収集を通じて、複雑な書類準備をお手伝いします。被相続人の出生から死亡までの戸籍や相続人全員の戸籍を、自分で集めるのは骨の折れる作業です。当事務所にご依頼いただければ、委任状ひとつで必要な戸籍一式を迅速に取り寄せることが可能です。また、取得した戸籍に基づいて法定相続情報一覧図の交付申請を行い、一覧図の写しを取得するところまでサポートいたします。一覧図があれば金融機関手続きが格段にスムーズになります。

さらに、司法書士は銀行提出用書類の準備・作成についても助言できます。預貯金払戻請求書や委任状への記入方法、添付書類の整え方など、実務を知る専門家がサポートすることで、書類不備による手続き遅延のリスクを減らすことができます。必要に応じて金融機関との調整や問い合わせ対応も代行し、依頼者の負担を軽減いたします(※金融機関によっては相続人本人の来店が必要な場合もありますが、その際も事前に同行してサポートすることが可能です)。

遺産分割協議との関係についても、司法書士がアドバイスいたします。預貯金の仮払い制度で引き出した金額は遺産分割時に考慮されるため、後々の相続手続にも精通した専門家の視点でアドバイスを受けておくと安心です。たとえば「誰がどの費用を支出したのか」を記録する方法や、遺産分割協議書への反映の仕方など、実務的なポイントまで含めてサポートいたします。

当事務所では相続手続きに関する初回相談は無料で承っております。預貯金の仮払い制度の活用方法について詳しく知りたい方、戸籍収集や法定相続情報証明の取得でお困りの方は、お気軽にご相談ください。専門家が法律に基づいて的確にアドバイスし、迅速な資金確保のお手伝いをいたします。

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